音楽室と化学室と美術室とPC室の融合部屋 所謂自由室

趣味と気分で適当に色々やります.なんかあるとたまに更新します.

ネイピア数と超越数についてのメモ

皆さん超越数って知っていますか

まず代数的数について,\mathbb{Z}係数の有限次多項式の解になるもの・・・
すなわち適当な0< n\in\mathbb{Z}a_0,\ a_1,\ \cdots,\ a_n\in\mathbb{Z}が存在し,
a_0 + a_1 x + a_2 x^2 + \cdots + a_nx^n = 0
を満たすとき,xは代数的数と言い,代数的数でないものを超越数と言います.

ネイピア数e超越数の1つになります.
今回はe超越数であることの証明について,備忘録としてまとめました.



方針

方針としては,

  • eが代数的数であると仮定する
  • eは代数的数と仮定しているので,g(e) = 0となる整数係数多項式が存在
  • g(x)の係数を用いて eを用いた整数の式Jを用意する
  • g(e) = 0を用いてJ中のeを消滅させる
  • Jの大きさの評価により発生する矛盾について調べる

という流れになります.


背理法の前提

eを代数的数とする.すると
g(e) = a_0 + a_1e + a_2e^2 + \cdots + a_Ne^N = 0
となる整数列\{a\}が存在する.

矛盾を発生させる前提の作成

f(x)を適当な有限次(一旦m次とする)多項式とする.するとf(x)m+1回以上の微分を行うと0の定数関数になる.
fについては後々考えるが,この性質はどんな式でも変わらないのでこの章はこのまま続ける.


まずF(t) = \int_{0}^{t}f(x)e^{t-x}dxについて計算する.
なぜこの積分を行うかというと,このFは部分積分を続けていくと有限個の項で積分が終わる.
この積分について2種類の大きさの評価を用いることで,矛盾を引き起こすことができる.


このF\int_{0}^{t}f(x)\left(-e^{t-x}\right)'dxとして部分積分を行うと
F(t) = (e^tf(0) - f(t)) + \int_{0}^{t}f^{(1)}(x)e^{t-x}dx
になる.新たに出てきた積分は,fの次数が下がっただけで特に変化がないので,同じように何度も繰り返す.

するとf^{(m+1)}(x) = 0になるので
F(t) = (e^tf(0) - f(t)) + (e^tf^{(1)}(0) - f^{(1)}(t)) + \cdots + (e^tf^{(m)}(0) - f^{(m)}(t))
で打ち切られ,
F(t) = e^t(f(0) + f^{(1)}(0) + \cdots + f^{(m)}(0)) - (f(t) + f^{(1)}(t) + \cdots + f^{(m)}(t))
となる.

Jの決定

g(e) = a_0 + a_1e + a_2e^2 + \cdots + a_Ne^N = 0となる整数列\{a\}を用いて考える.
今回はこの係数を用いた
J = a_0F(0) + a_1F(1) + \cdots + a_NF(N)
というJについて考えていきたい.
簡潔にまとめると
J = \sum_{j=0}^{N}a_jF(j)
になる.

すると
F(t) = e^t\sum_{k=0}^{m}f^{(k)}(0) - \sum_{k=0}^{m}f^{(k)}(t)
なので
J = \left(\sum_{j=0}^{N}e^ja_j\left(\sum_{k=0}^{m}f^{(k)}(0)\right)\right) - \left(\sum_{j=0}^{N}a_j\left(\sum_{k=0}^{m}f^{(k)}(j)\right)\right)
とまとめると
\sum_{j=0}^{N}e^ja_j = g(e) = 0
なので
J = - \sum_{j=0}^{N}\sum_{k=0}^{m}a_jf^{(k)}(j)
という部分のみが残る.

fについての考察

fの決め方

F積分に用いた多項式f(x)について,今回は
g(e) = a_0 + a_1e + a_2e^2 + \cdots + a_Ne^N = 0
となるN素数pを用いて
f(x) = x^{p-1}(x-1)^p(x-2)^p\cdots(x-N)^p
という式を作成する.

これは1次式(p - 1) + Np = (N + 1)p - 1個の積なので,m = (N + 1)p - 1次式になる.
これを微分したものを考えていきたい.

積の微分について若干の考察

例として1次式の積
h(x) = (x - \alpha)^n(x - \beta)^n
微分
h'(x) = n(x - \alpha)^{n-1}(x - \beta)^n + n(x - \alpha)^n(x - \beta)^{n-1}
というようにどれか1つの項の次数が落ちるだけで,少なくともn回は微分しないと
h^{(n)}(\alpha) \neq 0
もしくは
h^{(n)}(\beta) \neq 0
にはならない.

fの考察

p-1未満回の微分

以上を踏まえると,f(x)は少なくともp-1微分しないと
f^{(j)}(k) = 0
のままになる.

p-1回の微分

p-1微分した場合,x^{p-1}を消しきった項が1つ存在し,
f(x) = (p-1)!(x-1)^p(x-2)^p\cdots(x-N)^p + \cdots
という式にはなっているので,j = 0のとき
f^{(p-1)}(0) = (p-1)!(-1)^p(-2)^p\cdots(-N)^p
を整理し
f^{(p-1)}(0) = (p-1)!(N!)^{p}(-1)^{Np}
であり,1\leq j\leq Nのときは少なくとも(x-j)の項はどれも残っているので
f^{(p-1)}(j) = 0
になる.


p回以上微分を行った場合,以下の2つに分けられる

  • m次式全て微分しきった場合
  • まだ残っている場合
m次式全て微分しきった場合

m次式全て微分しきった場合は0になる.

まだ残っている場合

まだ残っている場合については,重点的に(x-k)^pを消化した場合,その分の次数下げが行われているので
f^{(j)}(k) = p!(\sim)
というようにp!の倍数になる.
他の引数については(x-k)^pが残っていればf^{(j)}(l) = 0であり,消えていればそれもまたp!の倍数になるので,
いずれにしろp!の倍数になる.

つまりp回以上微分を行うと,少なくともp!の倍数にはなる.


以上より,f^{(p-1)}(0)を除くとf^{(j)}(k)p!の倍数になり,
f^{(p-1)}(0)f^{(p-1)}(0) = (p-1)!(N!)^{p}(-1)^{Np}になる.


Jの評価(1)

これからJの評価を行う.
fに用いるpについては,p>Nかつp>|a_0|となる素数pが都合が良い.
「都合がいい」という理由はすぐに述べる.

ここからJ = - \sum_{j=0}^{N}\sum_{k=0}^{m}a_jf^{(k)}(j)について考察を行う.

少なくともa_0f^{(p-1)}(0)以外はp!の倍数であるが,
f^{(p-1)}(0)f^{(p-1)}(0) = (p-1)!(N!)^{p}(-1)^{Np}については
p>Nかつp>|a_0|であるためp!の倍数にはならない.

\{a\}は整数列であり,f(x)も整数係数多項式なので,Jも整数になる.
また,|J|\neq 0であるため|J|\geq (p-1)!になる.

Jの評価(2)

次にFを構成していた
F(t) = \int_{0}^{t}f(x)e^{t-x}dx
についての考察を行う.

これは
\left|F(t)\right| \leq \int_{0}^{t}\left|f(x)e^{t-x}\right|dx
であり,f(x)の各係数に絶対値をつけたg(x)を定義すると
\left|F(t)\right| \leq |t|g(t)e^{|t|}
という評価ができる.

また
f(x) = x^{p-1}(x-1)^p(x-2)^p\cdots(x-N)^p
と定義していたので
f(x) \leq (2N)^{p-1}(N + N)^p\cdots (N + N)^p = (2N)^m
という簡単な式で評価ができ,
\left|F(t)\right| \leq |t|(2N)^me^{|t|}
になる.

一方
J = a_0F(0) + a_1F(1) + \cdots + a_NF(N)
なので
|J| \leq a_1(2N)^me + a_2(2N)^me^2 + \cdots + a_NN(2N)^me^{N}
になる.

これを更に大きく見積もっていく.
\{a\}の中で最大のものをaと置き,e^kに関しては全てe^Nにする.
|J| \leq a(2N)^me^N + a(2N)^me^N + \cdots + aN(2N)^me^{N}
整理して
|J| \leq aN^2(2N)^me^N
更に大きく見積もるため,a,\ 2N,\ N^2,\ e^Nの中で最大のものをbと置き,m = p(N+1)-1だったので
|J| \leq b^{p(N+1)+2} \leq b^{p(N+2)}
こうしてpによらない十分に大きいCに対し
|J| \leq C^{p}
と評価ができる.

矛盾を導く

これまでの議論により|J|\geq (p-1)!|J| \leq C^{p}の2つの評価が得られた.
つまり(p-1)!\leq C^{p}という大小関係になるが,素数pを限りなく大きくしていくと
\frac{C^p}{(p-1)!}\to 0
なので(p-1)!\geq C^{p}になる.

つまり大小関係がおかしくなってしまうため,矛盾が発生する.
この矛盾の原因は,eが代数的数であり,
g(e) = a_0 + a_1e + a_2e^2 + \cdots + a_Ne^N = 0
となる整数列\{a\}が存在すると仮定したことに起因する.

こうしてe超越数であることを示すことができた.