前回に引き続き今度は積分から
積分
実関数の積分
高校数学でもおなじみの積分といえば,皆さんご存知の通り,もちろん面積の導出が定義ということから始まります.
高校数学の積分といえば,ある点からまでのグラフの面積をと置く.これをと書く.
微小区間にx軸をいくつも区切って,微小区間の内部の関数の最大値を,最小値をと置くと,微小区間の面積は
と書けるので
と変形できるので,と極限をとればでになるので
こうして面積関数を微分すると面積を描く関数になることがわかり,積分は微分の逆演算になる性質をもっていることが確認できた.
ちなみに積分の式は
と表記でき,が等しい時
になりますね!
複素関数の積分
以上の積分を複素関数にもやりたい!
・・・のですが,実関数の積分は軸を底辺にできたのですが,複素関数では変数が1つでもという実質2変数みたいなものなので軸に対応するものがありません.
そこで複素平面上に軸を描画してやります.
とパラメタを用いて積分経路を決めてやって
というように経路を記述して積分とします.
前回の微分の記事と同じように
としてやり,区切った曲線上の点をと記述し,とする.
ついでに,と記述する.
この曲線をいくつかに分割し,実積分と同様に
としてやる.
そして
と変形し,
これの極限を取り,
パラメタを用いて,と置換を行い
まとめる
最後に,なので
という変形が得られる.ただの置換積分の形になった.
コーシーの積分定理
せっかく積分は定義できたから,実関数の積分のように何かしら適当な関数が存在して,始点と終点だけで計算できないかなって思いますよね.
そこで,始点と終点だけで計算結果が決まる場合を考えてみましょう.
適当に経路をとって始点と終点だけで積分結果が決まるなら
から適当に経路をとってに戻ってくるなら
となり,一周すると0になるはず.
しかし先の計算ではでを中心にぐるっと周る経路の積分はになり0にならなかった.
・・・そう.実積分のようなノリで計算するには何かしら条件が存在必要になってくる.
その条件は積分経路と閉路の内部が正則であるというシンプルな条件であることがコーシーによって示された.
これの証明は色々調べられて,グルサの方法で初等的に示すことができる.
グルサの方法によるコーシーの積分定理の証明
コーシーの積分定理の証明を行う.
複素積分自体,経路をいくつも細かく分割して行った.
この証明も同様に経路を細かく分割して行うが,基本的に任意の多角形について成り立つことを示せれば良いというイメージで十分.
多角形の分割
最初の手順として,多角形を適当に対角線を交わらないように引き,複数の三角形に分割する.
三角形の積分を反時計回りに全て行うと,共通する対角線は打ち消し合い,元の多角形の辺のみ結果が残る.
1つの三角形についてコーシーの積分定理が成り立てば,全ての三角形の積分結果が0なので,元の多角形の結果も0になる.
三角形の各辺の中点を結び,1つの三角形を4つに分割する.
今回は1回目の三角形の分割なので,元の三角形を,分割後をとする.
ここでの経路のうち積分結果の一番大きいものをと表記し,
三角不等式
を利用すると
になる.
この式は
としたほうが今後の話の流れがスマートになる.
次にを分割するのでとし,同様に分割を行い
とし,として同様に・・・
・・・
これを繰り返すとN回の操作では
になる.
細かくした三角形について
話は変わるが三角形を細かくしていくとまるで点のように小さくなる.
そこでその小さな三角形の内部に1つ点をとり,三角形の周上の適当な点と比較すると,
はへと近づいていく.
つまり関数が正則なら三角形を限りなく小さく分割していくなら,適当なに対して
になる分割数が存在する.
この式の両辺にを乗じると
になる.
これを細かくしていった末の三角形に対して積分を行うと
とでき,これも三角不等式
から
になるので,大小関係としては
という結果になる.
この積分
は三角形の周に対してのの積分で,内部のは定数になるので,も定数.
つまり,左辺の積分自体はの積分と,の積分と定数の積分に分けられる.
の積分と定数の積分について三角形の積分を考えることにする.
原始関数を用いた積分
さてこれでようやく実積分のように原始関数が存在する場合について考えることができる.
正則の範囲内であればどのような経路をとっても積分結果は変わらないことがわかった.
関数を適当な積分の始点をとおいて
と定義する.
微小区間からの積分は
ここで始点を用いて
とすると
なので
になる.あとは右辺の積分が0になってくれると嬉しい.
そこでおなじみの三角不等式で
ここでとなるとき,になるので
これで
になることが示せた.
こうしてようやくの正則範囲内に経路を取る場合,実積分と同様に原始関数が存在すれば実積分と同様に端点のみで計算すれば積分の計算ができることが示せた.
コーシーの積分定理の応用
コーシーの積分定理は範囲内が正則なら閉路の積分は全て0になるなんていう便利な定理だった.
じゃぁ閉路の内部に正則ではない部分が存在すると?・・・というのも一考する必要がある.
実は正則でない部分を含む閉路の積分は,閉路を含んでいればどんなに閉路を変形しても良い.
それは閉路を正則でない部分を通るように2つの閉路に分割し,分割した線を正則でない部分を避けるように変形すればよい.
すると2つの積分の分割した箇所は打ち消し合い
正則でない部分の周囲の経路の積分と,元の経路の積分は等しいことがわかる.
同様にして,内部に除外したい点が複数存在する場合も,除外した点の周囲の積分の総和
になる.
コーシーの積分公式と無限回微分できる話
コーシーの積分公式
最後にコーシーの積分公式の説明をしてこの記事を終わる.
正則関数を用いてという関数を定義する.
これはとなり,先程の緩くなる条件を満たすので
これを変形し
ここでと置換すると
という公式が得られる.
これをコーシーの積分公式という.
無限回微分ができる話
コーシーの積分公式
に対して両辺をで微分してみたい.このとき右辺の積分と微分の順序交換ができるとすると
これを続けていくと
になることが予想できる.
ここで問題となるのが,
- 任意のについてがで連続であること
- 微分結果がこの形になること
の2つが挙げられる.それを確認してこの記事を終わりとする.
まず1回目の微分から
これは数学的帰納法で示す.
最初に元の関数について
を計算し
と変形する.
ここで積分経路を閉曲線内部に入るを中心とする半径の円に変形し,と改めておく.
そしてを中心とする円を半径の円の内部に入れ,半径をとする.
するとと半径の円周上の点の距離はになるので
次にをに近づけるため
としても差し障り無く,との距離も
としても差し障り無い.
また経路上のの最大値をとすると
になり,おなじみの大小比較
をする.
すると
と変形ができる.
ここでもも閉路内部の円なので有限の大きさなので,
が成立し,まずは連続であることが示せた.
また,
を変形すると
になるため,の極限をとると
が得られる.