リーマンの素数公式のときに軽く説明したが,
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素数の個数についての近似定理,『素数定理』について調べたことを軽くまとめる.
素数定理とは
最初に記法についてだが,となる関数との関係をと表す.
素数定理とは,以下の素数の個数を表す関数(素数計数関数という)を用いて
となる定理である.
言い換えると
となる.
これを証明しようとリーマンが「与えられた数より小さい素数の個数について」という論文で素数計数関数を与える式
を導出したが,ゼータ関数の非自明な零点を用いた和が必要で,この式を用いた証明としては不完全なものとなり,その非自明な零点の和に関する分布の予想がリーマン予想になる.
素数定理は他の手法で証明され,最後にはリーマン予想という大きな問題だけが残った.
元々はPerronの公式やChebyshevの関数を用いた証明があったが,Newmanによって初等的な証明が成された.
現在ではNewmanの証明を元にした以下の証明も見られる.
この記事は【Newman's Short Proof of the Prime Number Theorem】というpdfを元に書いていく.
また日本語として解説しているpdfも2つあった
【素数定理の証明】
【代数学特論 – リーマンのゼータ関数と素数分布について –】
ので参考にさせてもらった.
Newmanの証明を元にした素数定理の証明
問題設定の変更
以下の素数にわたる対数の和
という関数を用いると
と大小関係を考えることができ,あとは素数にわたる和なので,を用いて
という関係になる.
よって
という関係が得られる.
次に部分和として任意のを用いて
という大小関係を考える.
これも素数計数関数を用いて
と書くことができ,明らかになので
最後にこれを変形すると
これで
となる.
こうして,は任意なので
となり,はさみうちの原理からのときであることを示せば良い.
こうして素数定理の証明はを示す問題にすげ替えることができる.
以下からはを示すことを目標としていく.
θ(x)のオーダー
まずのオーダーについて考える.
2の乗について,
になる.
ここではの素数全てで割り切ることができるので,になる.
これをで表すと
になる.
こうして
が得られる.
と置くと
ととなる.
任意のについて,となるを使って
を足していくと
になる.
こうして
が得られ,は定数なのでがわかった.
θ(x)~xの証明
ここからは,いわゆるを示す.
ここで仮にの場合を考えることにする.
その場合,
のいずれかになるはず.
そこでそれぞれ試しに考えていくことになる.
最初にとなる場合を考えるが,であることからがある程度大きくなるととなる数値を用いてになる.
『仮にが収束するなら』,めちゃくちゃ大きい数値を使ってと書くことができる.
ここでのときとなるので
途中の式変形はと置換した.
ここでとなり,としても影響しないので,という前提が間違っていることになる.
同様にとすると,がある程度大きくなるととなる数値を用いてとなる.
仮にが収束するなら,めちゃくちゃ大きい数値を使ってと書くことができる.
ここでとなるので,とすると
になる.
この場合もとなり,に依存しないので,という前提が間違っていることになる.
こうしてでもでもないのでになる.
ここで問題は【仮にが収束するなら】と仮定している部分の真偽に委ねられる.
この積分はと置換すると
という積分に置き換えられ,今後はこれが収束することを示すことがメインになる.
関数の定義
ゼータ関数のオイラー積
の対数微分
を変形する
ここで関数
を定義すると
になる.
このは
と書き直すことができ,番目の素数をとすると
とまとめることができ,
になる.
と置換すると
となり,はのラプラス変換になる.
この先の話の流れとしては,このラプラス変換を用いて先のの収束性の証明をしていくが,そのためにはの性質について調べる必要がある.
関数Φ(s)の性質
以下の3つの関数
について調べていく.
はとなり,において留数1の極を持つ.
についてローラン展開すると
という形になり,はオイラー定数,は一般オイラー定数と呼ばれる.
におけるローラン展開の極を消去するとはで正則になる.
自体はでは零点を持たない.
ここでの直線上で零点が存在するかを見ていく.
はで正則になるのでとするとになる.
ここでになるので
になり,はで留数1の極を持つ.
次にがで位の零点を持つとして,で位の零点を持つとする.(の場合もある)
もしもがで位の零点となる場合,
となるが存在する.
これを微分すると
になり,
となるので,
と変形でき,と留数の一位の極になる.
また,に対しはとなりになるので,ならばということがわかる.
ここで前述の
について,
はのときに収束することを見ていく.
となる.
ここでとするとなのでになりはのときに収束する.
つまりの右辺はのときに収束する.
こうして
の極はに委ねられることになった.
ここで先の議論で,がで位の零点を持つならばはで留数の一位の極が得られるので,
になる.
ここでなので,になる.
つまり右辺をうまいこと使うととしても
ということがわかる.
しかし一方,左辺はとすると
になるが,この計算結果は0以上になるはずで,としかならない.
がで位の零点を持つと仮定していたので,はで零点を持たないことがわかる.
よっての極はのみであり,その極は位数1で留数1になる.
とローラン展開でき,
はで正則になる.
積分の収束性
先程なぜの正則性の話まで考えたのかと言うと,
という積分について,先のが収束することを証明するためだ.
のラプラス変換
について収束性が証明でき,が言えるなら素数定理の証明は終了する.
と変形すると,より
になり,はで正則なので,はで収束する.
最後に
がで収束するときにとなることが言えれば良い.
ここで解析的定理を証明する.
がで積分可能で
がで正則のとき,は収束し,になる
ここでの積分区間を変更したについて,になることを示すことが最後の目標になる.
という関数を定義すると,としたコーシーの積分公式から,
になり,とするときに右辺が0になることを示せば良い.
ここで
になるのでこれから右辺を評価する.
積分経路をからの虚軸の少し左側を通る経路を,を中心とした半径のの半円を通る経路をとしてとする.
半円上の評価について,までのの最大値をとすると
またとすると
になり,
と評価ができる.
直線の評価についてはとについて分割でき
とする.
については
という評価と,までのの最大値を,として
になるので
という評価が得られる.
最後は
の評価だが,
積分経路上のの最大値をとすると
という評価からあとは
と計算できる.
よって
になる.
最後はこれまでの積分
について,
及び
だったので,
あとはとすると
で,はいくらでも広げられるので
になる.
つまり
ということが示せたので,素数定理の証明ができた.