基本的なところ
導入
を満たす数,虚数については言うまでもない.実数を用いてと書いたものを複素数とする.
基本的に複素数はのように1文字で表現され,これと対になるをの複素共役という.
を平面に対応させて,軸を実軸,軸を虚軸と呼び,を実部,を虚部と言う.
演算
との演算は
といったように実数と同じように計算ができ(商の場合はとする),
については分子,分母共にを乗じることにより
と分母からを消去することができる.
また演算は可換で
,
分配法則を満たし
結合法則も満たす.
絶対値
2点との距離はユークリッド距離で定義することができて,距離の定義としては
のように,2点を入れ替えても距離は同じ,距離0なら2点は同じ,三角不等式の3つが満たされるために都合が良い.
原点から点までの距離をと表記して,絶対値とする.
絶対値の式としては,とも書ける.
整関数
ダランベール判定法
次に正項級数
について考える.
実関数と同様ダランベールの判定法
の場合収束
が扱える.
となるを適当に取ると,ある程度大きいではとなるが存在するので
になる.
の部分は有限の項数なので有限に収まり
は収束する.
収束半径
次は
について考える(この形で表すことができる関数を整関数という.)が,各項に絶対値をつけダランベール判定法を考えると
になる.
この時
と置くとの時に1未満になるので絶対収束する.
このを収束半径と言う.
ということが言える.
冪級数展開の零点は孤立する話
複素解析で重要な定理,一致の定理.
冪級数展開可能な関数の零点は孤立する
といったもの.
例えば冪級数展開可能な関数なら
と書けるわけで,零点を取るということはになる.
そこで,となる最小のをとってきて
と変形し,と記す.
は以外では零点にならないので,に焦点をあてて考える.
零点が孤立しない場合はがの周辺で0に存在しないが,としたときになりとはならないので矛盾する.
つまり冪級数展開可能な関数の零点は孤立することが示せて,孤立しない場合は係数全てになる.
つまり零点が孤立しない場合になる.
一致の定理
これを使うと,冪級数展開可能な関数とが,ある集積点全体でとなる場合,と変形し,先の零点が孤立しない場合という定数関数になるため,永続的に一致することがわかる.
解析接続
例えば普通の関数がある範囲で冪級数展開可能で,もある範囲で冪級数展開可能な場合,との共通部分でなら,
の範囲では
の範囲では
といった新たな関数を定義してやると自然な関数の接続になり得る.
この考え方を解析接続と言い,例えば共通部分ならばの性質をにも適用できるなんてことも可能になる.
一番イメージしやすい解析接続といえば
であり,左辺はの範囲でしか考えることができないが,右辺になるとの範囲ならいくらでも考えることができる.
そこでについての性質を見つけることができれば,についての性質としても考えることができるかも?といったような考え方ができる.
初等関数の解析接続と定義
さてここまで頑なに
を使わなかったが,この章から解禁することができる.
ダランベールの判定法から
の収束半径はであり,実軸上では
であるため,
という解析接続が自然になる.
同様にして
という解析接続も得られる.
この解析接続を利用して,オイラーの公式
が得られる.
ここで,を利用すると
と表現でき,極座標表示に対応することも把握ができる.
これも解析接続で
とするのが自然だろう.
また,
等の変形や,三角関数の加法定理等の諸々の定理も実関数と同様に行うことができるので
という公式も容易に得られる.
対数関数は別に指数関数の逆関数という定義を改めて定義してやるが,指数関数が三角関数で表現できてしまうことにより,この定義では対数関数は無限個の対数をもつことがわかってしまう.
詳しい話は次に回す.
微分
コーシー・リーマン方程式
必要条件
では微分の大雑把な説明はしたけど,具体的にはどのような関数が微分可能なのか?
そこである関数について,複素数に対する二変数の実関数を用いて
の二変数関数として表現できる.
はとすると二変数関数として
になるので
を整理すると
になる.
ここでを0に近づけるが,例えば実軸を通りとする場合,なので
と簡略化できる.
これはについての偏微分なので
同様に,今度はを虚軸を通りとする場合,なので
と変形できるので,
これで2つの結果が等しくなれば良いので
ここで係数比較で
,
簡略化して書くと
,
の2つの微分方程式が得られる.
この微分方程式が,関数が微分できる必要条件になる.
これをコーシーリーマン方程式と言う.このブログではCauchy - Riemann方程式の2人の頭文字をとりCR方程式と記すことにする.
十分条件
次に関数はCR方程式が満たされれば微分可能なのか?という十分条件も示さなくてはいけない.
この章の残りはがCR方程式を満たせばが一意に定まることを目標にしていく.
からスタートする.
実関数の平均値の定理は,とを結ぶ直線の傾きと同じ接線の傾きをもつ点がからまでの間に存在するというものなので,ととなるを用いて
,
と表現することができる.
とすると
この式は平均値の定理を用いるには二変数が関わっているので扱いづらい.
ここからは式がごちゃごちゃするので先にを取り出して考える.
とを間に入れてやる.
すると平均値の定理が1変数で扱うことができて
とシンプルになる.
次にを足して
整理して
という形にする.
と
はと極限を取る際に0になるので誤差項という扱いでに省略して
という形にまとめてやる.
に関しても同様に計算を行い
という形にする.
これで,とまとめると
になる.
ここでようやくCR関係式を満たす場合という条件を用いる.
,
の関係式を用いて
これをまとめると
ここでと置いていたので
両辺をで割ると
こうしてと極限を取ると,でになるので
になり,極限の取り方に依拠しないことが示せた.