音楽室と化学室と美術室とPC室の融合部屋 所謂自由室

趣味と気分で適当に色々やります.なんかあるとたまに更新します.

複素解析のメモ(1)(微分まで)

複素解析の簡単なところから微分までのとりあえずのまとめ


基本的なところ

導入

i^2 = -1を満たす数,虚数については言うまでもない.実数x,y\in \mathbb{R}を用いてx+iyと書いたものを複素数とする.
基本的に複素数z = x+ iyのように1文字で表現され,これと対になる\overline{z} = x - iyz複素共役という.
z = x+iyx-y平面に対応させて,x軸を実軸,y軸を虚軸と呼び,{\rm Re}(z) = xを実部,{\rm Im}(z) = yを虚部と言う.

演算

z_1 = x_1 + iy_1z_2 = x_2 + iy_2の演算は
z_1 + z_2 = (x_1 + x_2) + i(y_1 + y_2)
z_1 - z_2 = (x_1 - x_2) + i(y_1 - y_2)
z_1z_2 = (x_1x_2 - y_1y_2) + i(x_1y_2 + y_1x_2)
\frac{z_1}{z_2} = \frac{x_1 + iy_1}{x_2 + iy_2}
といったように実数と同じように計算ができ(商の場合はz_2\neq 0とする),
\frac{z_1}{z_2} = \frac{x_1 + iy_1}{x_2 + iy_2}
については分子,分母共にx_2 - iy_2を乗じることにより
\frac{z_1}{z_2} = \frac{x_1 + iy_1}{x_2 + iy_2} = \frac{(x_1x_2 + y_1y_2) - i(x_1y_2-x_2y_1)}{x_2^2+y_2^2}
と分母からiを消去することができる.
また演算は可換で
z_1 + z_2 = z_2 + z_1z_1z_2 = z_2z_1
分配法則を満たし
z_1(z_2 + z_3) = z_1z_2 + z_1z_3
結合法則も満たす.
(z_1 + z_2) + z_3 = z_1 + (z_2 + z_3)


絶対値

2点z_1 = x_1 + iy_1z_2 = x_2 + iy_2の距離d(z_1,z_2)ユークリッド距離で定義することができてd(z_1,z_2) = \sqrt{(x_1 - x_2)^2 + (y_1 - y_2)^2},距離の定義としては
d(z_1,z_2) = d(z_2,z_1)
d(z_1,z_2) = 0 \Longleftrightarrow z_1 = z_2
d(z_1 + z_3) \leq d(z_1,z_2) + d(z_2,z_3)
のように,2点を入れ替えても距離は同じ,距離0なら2点は同じ,三角不等式の3つが満たされるために都合が良い.
原点から点zまでの距離を|z|と表記して,絶対値とする.
絶対値d(z_1,z_2) = \sqrt{(x_1 - x_2)^2 + (y_1 - y_2)^2}の式としては,d^2(z_1,z_2) = z\overline{z}とも書ける.

極座標表示

z = x + iy極座標で表すことができて,実軸との成す角\thetaと絶対値r = |z|を用いてr(\cos\theta + i\sin\theta)と表記できる.
極座標表示の演算は結構特殊で,三角関数の加法定理を用いて計算すると
r_1(\cos\theta_1 + i\sin\theta_1) r_2(\cos\theta_2 + i\sin\theta_2) = r_1r_2(\cos(\theta_1 + \theta_2) + i\sin(\theta_1 + \theta_2))
を満たすことがわかり,z_1 = (r_1,\theta_1)z_2 = (r_2,\theta_2)との積はz_1z_2 = (r_1r_2,\theta_1 + \theta_2)となることがわかる.

以上を踏まえるとド・モアブルの定理(\cos\theta + i\sin\theta)^n = \cos(n\theta) + i\sin(n\theta)はすぐ説明がつくが,指数部分が有理数の場合は三角関数2\piを周期に持つ周期関数であるため,整数mを用いて
\cos{\theta} = \cos{(\theta + 2m\pi)}
\sin{\theta} = \sin{(\theta + 2m\pi)}
と考えることができるので
(\cos\theta + i\sin\theta)^\frac{a}{b} = \cos(\frac{an}{b}\theta + \frac{2am\pi}{b}) + i\sin(\frac{an}{b}\theta + \frac{2am\pi}{b})
なんてことになってしまい,1つに決定できずややこしいことになってしまうので注意が必要になる.

言葉の取り決め

開集合:ある閉曲線の内部で,境界線を含まない.
閉集合:ある閉曲線の内部で,境界線を含む.
近傍:開集合Xの内部のある点Pを含む,Xの十分小さい部分集合を,Pの近傍という.点P周辺全体.
孤立点:開集合X内の開集合Yで,XとYの共通部分がある一点のみの集合.孤立している点.
集積点:孤立点でない集合.
偏角極座標表示をする際の中心角

極限

極限

wに収束する複素数\{w_n\}複素数Aに対して
\lim_{n\to\infty}|w_n - A| = 0
となることを,wA収束するといい,
\lim_{n\to \infty}w_n = A
と書く.
同様にwに収束する数列\{w_n\}が関数f(z)に対して
\lim_{n\to \infty}|f(w_n) - A| = 0
となる場合,\lim_{z\to w}f(z) = Aと記す.
これはおなじみの
\forall _{\varepsilon>0} ,\ \exists_{\delta>0} \ \ s.t.\ \ |z-w|<\delta \Rightarrow |f(z) - A|<\varepsilon
とも記せる.

整関数

等比級数

複素数では
1 + z + z^2 + z^3 + ... + z^n
について考えてみる.
これは実数の場合と同様に
S =1 + z + z^2 + z^3 + ... + z^n
と置くと
Sz = z + z^2 + z^3 + ... + z^n+z^{n+1}
S(1-z) = 1 - z^{n+1}
になるため
S = \frac{1 - z^{n+1}}{1-z}
となる.
ここで|z| < 1に限定してn\to \inftyとしてやると|z^{n+1}| \to 0なので(1>|r|\in \mathbb{R}の時r^n(\cos\theta + i\sin\theta)^n\to 0で示せる)
S = \frac{1}{1-z}
になることがわかる.

ダランベール判定法

次に正項級数
a_0 + a_1 + a_2 + a_3 + \cdots
について考える.
実関数と同様ダランベールの判定法

\lim_{n\to \infty} \frac{a_{n+1}}{a_n} = r< 1の場合収束

が扱える.
r < \rho < 1となる\rhoを適当に取ると,ある程度大きいNではr < \frac{a_{N+1}}{a_N} < \rhoとなるNが存在するので
a_{N+m} < \rho a_N^m
a_0 + a_1 + \cdots + a_N + a_N\rho + a_N\rho^2 + \cdots
になる.

a_0 + a_1 + \cdots + a_{N-1}
の部分は有限の項数なので有限に収まり
a_N + a_N\rho + a_N\rho^2 + \cdots = a_N(1 + \rho + \rho^2 + \cdots) = a_N\frac{1}{1-\rho}
は収束する.

収束半径

次は
a_0 + a_1z + a_2z^2 + a_3z^3 + \cdots
について考える(この形で表すことができる関数を整関数という.)が,各項に絶対値をつけダランベール判定法を考えると
\lim_{n\to \infty} \left|\frac{a_{n+1}z^{n+1}}{a_nz^n}\right| = \lim_{n\to \infty} \left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right||z|
になる.
この時
\lim_{n\to \infty} \left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right| = Rと置くと|z|<\frac{1}{R}の時に1未満になるので絶対収束する.
このRを収束半径と言う.
ということが言える.

一般に
\sum_{n=0}^{\infty} a_n(z - \alpha)^n
と表記できる関数ならば級数展開可能とする.
これは実変数で言うテイラー展開の形に対応する.

級数展開の零点は孤立する話

複素解析で重要な定理,一致の定理.

級数展開可能な関数の零点は孤立する

といったもの.
例えば冪級数展開可能な関数なら
\sum_{n=0}^{\infty} a_n(z - \alpha)^n
と書けるわけで,零点を取るということはa_0 = 0になる.
そこで,a\neq 0となる最小のNをとってきて
\sum_{n=N}^{\infty} (z - \alpha)^N(a_N + a_{N+1}z + \cdots)
と変形し,\sum_{n=N}^{\infty} (z - \alpha)^Nh(z)と記す.
(z - \alpha)^Nz=\alpha以外では零点にならないので,h(z)に焦点をあてて考える.

零点が孤立しない場合はh(z)\alphaの周辺で0に存在しないが,z\to \alphaとしたときg(z) = 0になりa_Nとはならないので矛盾する.
つまり冪級数展開可能な関数の零点は孤立することが示せて,孤立しない場合は係数全てa_n=0になる.
つまり零点が孤立しない場合f(z) = 0になる.

一致の定理

これを使うと,冪級数展開可能な関数f(z)g(z)が,ある集積点全体でf(z) = g(z)となる場合,h(z) = f(z) - g(z) = 0と変形し,先の零点が孤立しない場合h(z) = 0という定数関数になるため,永続的に一致することがわかる.

解析接続

例えば普通の関数f(z)がある範囲D_1で冪級数展開可能で,g(z)もある範囲D_2で冪級数展開可能な場合,D_1D_2の共通部分でf(z) = g(z)なら,
D_1の範囲ではh(z) = f(z)
D_2の範囲ではh(z) = g(z)
といった新たな関数を定義してやると自然な関数の接続になり得る.
この考え方を解析接続と言い,例えば共通部分D_1 \cap D_2ならばg(z)の性質をf(z)にも適用できるなんてことも可能になる.

一番イメージしやすい解析接続といえば
1+z+z^2+z^3+\cdots = \frac{1}{1-z}
であり,左辺は|z|<1の範囲でしか考えることができないが,右辺になるとz\neq 1の範囲ならいくらでも考えることができる.
そこで\frac{1}{1-z}についての性質を見つけることができれば,1+z+z^2+\cdotsについての性質としても考えることができるかも?といったような考え方ができる.

初等関数の解析接続と定義

さてここまで頑なに
e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta
を使わなかったが,この章から解禁することができる.

ダランベールの判定法から
1+\frac{1}{1!}z + \frac{1}{2!}z^2 + \frac{1}{3!}z^3 + \cdots
の収束半径は\inftyであり,実軸上では
e^x = 1+\frac{1}{1!}x + \frac{1}{2!}x^2 + \frac{1}{3!}x^3 + \cdots
であるため,
e^z = 1+\frac{1}{1!}z + \frac{1}{2!}z^2 + \frac{1}{3!}z^3 + \cdots
という解析接続が自然になる.

同様にして
\sin{z} = \frac{1}{1!}z - \frac{1}{3!}z^3 + \frac{1}{5!}z^5 - \cdots
\cos{z} = 1 - \frac{1}{2!}z^2 + \frac{1}{4!}z^4 - \frac{1}{6!}z^6 + \cdots
という解析接続も得られる.

この解析接続を利用して,オイラーの公式
e^{ix} = 1+\frac{1}{1!}ix - \frac{1}{2!}x^2 - \frac{1}{3!}ix^3 + \cdots = \cos{x} + i\sin{x}
が得られる.
ここで,x,y\in \mathbb{R}を利用すると
e^{z} = e^{x+iy} = e^x \cdot e^{iy} = e^x(\cos{y} + i\sin{y})
と表現でき,極座標表示に対応することも把握ができる.

これも解析接続で
e^{iz} = 1+\frac{1}{1!}iz - \frac{1}{2!}z^2 - \frac{1}{3!}iz^3 + \cdots = \cos{z} + i\sin{z}
とするのが自然だろう.
また,
e^{z_1}e^{z_2} = e^{z_1 + z_2}
等の変形や,三角関数の加法定理等の諸々の定理も実関数と同様に行うことができるので
\cos{z} = \frac{e^{iz} + e^{-iz}}{2}
\sin{z} = \frac{e^{iz} - e^{-iz}}{2i}
という公式も容易に得られる.


対数関数は別に指数関数の逆関数という定義を改めて定義してやるが,指数関数が三角関数で表現できてしまうことにより,この定義では対数関数は無限個の対数をもつことがわかってしまう.
詳しい話は次に回す.

複素対数関数

指数関数w = e^z逆関数を対数関数と定義した.
z = \log{w}
しかし考えてみると
e^{z} = e^{x+iy} = e^x \cdot e^{iy} = e^x(\cos{y} + i\sin{y})
であり,三角関数は周期関数なので
\cos{x + 2\pi} = \cos{x}\sin{x + 2\pi} = \sin{x}
であり,n\in \mathbb{N}を用いると
e^{i\theta} = e^{i(\theta + 2n\pi)}
と表現ができる.
ここで対数を使うと
\log{e^{z}} = \log{e^{x+iy}} = x + i(y+2n\pi)
になってしまい,無限個の値を取ることになってしまう.

f:id:Aryuaryuaryuryu:20210731204454p:plain
Wikipediaより引用

それでは話がややこしくなってしまうので,上記の画像のように無限に面がある中で,面を全て同じように分割していく.
その分割した中で1つを決定してやり,「この面を扱うよ」と記述してやることで値が一つに定まる.
例えば
\log{e^{z}} = \log{e^{x+iy}} = x + i(y+2n\pi)
となるなかで,n=0となる面を扱うという旨の記述をすれば
\log{e^{z}} = \log{e^{x+iy}} = x + iy
というように1つのみに定めることが可能になり,指数関数と対数関数が全単射の関係に収まることになる.

微分

微分の定義

次に実関数でのおなじみの微分について.
関数fについて
\lim_{h\to 0}\frac{f(z+h) - f(z)}{h}
が極限をもつ場合
\lim_{h\to 0}\frac{f(z+h)-f(z)}{h} = f'(z)
と記し,微分が定義できる.
ただこの極限は,hをどのような極限のとり方をしても一位に定まる場合とする.

\alpha微分が定義できるならば,点f\alpha微分可能という.
特に\alphaを含む任意の開集合全体で微分が可能なら,f\alpha正則であるという.

微分ができない例と,微分可能であるが正則でない例

例えばf(z) = |z|^2 = z\overline{z}について考えると,\overline{z+w} = \overline{z} + \overline{w}なので
\lim_{h\to 0}\frac{(z+h)(\overline{z} + \overline{h}) - z\overline{z}}{h}
これを展開して計算すると
\lim_{h\to 0}\left(\overline{z} + \overline{h} + z\frac{\overline{h}}{h}\right)
になる.
h = \Delta x + i\Delta yとし,極限のとり方を\Delta y = k\Delta xという近づき方にすると,hは傾きkの直線上を通り0に近づくことになる.
このときh = \Delta x(1 + ki)\overline{h} = \Delta x(1-ki)になるので
\lim_{\Delta x \to 0}\left(\overline{z} + \Delta x(1-ki) + z\frac{\Delta x(1-ki)}{\Delta x(1+ki)}\right)
つまり
\overline{z} + z\frac{(1-ki)}{(1+ki)}
この極限は,hの近づき方によるパラメタkによって影響されるので,極限が存在しない.つまり,微分不可能な関数になる.
ただ唯一存在する微分可能な点は,z = 0で,この時に限ってパラメタkが消滅するので極限が唯一存在する.
ただ,z=0周辺に微分可能な点は存在しない,微分可能な点は孤立しているため,正則ではない.

コーシー・リーマン方程式

必要条件

では微分の大雑把な説明はしたけど,具体的にはどのような関数が微分可能なのか?
そこである関数f(z)について,複素数z = x+iyに対する二変数の実関数u(x,y),v(x,y)を用いて
f(x,y) = u(x,y) + iv(x,y)
の二変数関数として表現できる.
f(z+h)h = \Delta x + i\Delta yとすると二変数関数として
f(x+\Delta x, y+\Delta y) = u(x+\Delta x,y+\Delta y) + iv(x + \Delta x, y+\Delta y)
になるので
\frac{f(z+h) - f(z)}{h} = \frac{(u(x+\Delta x,y+\Delta y) + iv(x + \Delta x, y+\Delta y)) - (u(x,y) + iv(x,y))}{\Delta x + i\Delta y}
を整理すると
 = \frac{ u(x+\Delta x,y+\Delta y) - u(x,y) }{\Delta x + i\Delta y} + i\frac{ v(x+\Delta x,y+\Delta y) - v(x,y) }{\Delta x + i\Delta y}
になる.


ここでh = \Delta x + i\Delta yを0に近づけるが,例えば実軸を通りh\to 0とする場合,\Delta y = 0なので
\lim_{\Delta x\to 0}\frac{ u(x+\Delta x,y) - u(x,y) }{\Delta x} + i\frac{ v(x+\Delta x,y) - v(x,y) }{\Delta x}
と簡略化できる.
これはxについての偏微分なので
\lim_{\Delta x\to 0}\frac{ u(x+\Delta x,y) - u(x,y) }{\Delta x} + i\frac{ v(x+\Delta x,y) - v(x,y) }{\Delta x} = \frac{\partial u}{\partial x} + i\frac{\partial v}{\partial x}


同様に,今度はhを虚軸を通りh \to 0とする場合,\Delta x = 0なので
\frac{ u(x,y+\Delta y) - u(x,y) }{i\Delta y} + i\frac{ v(x,y+\Delta y) - v(x,y) }{i\Delta y} = -i\frac{ u(x,y+\Delta y) - u(x,y) }{\Delta y} + \frac{ v(x,y+\Delta y) - v(x,y) }{\Delta y}
と変形できるので,
\lim_{\Delta y \to 0}-i\frac{ u(x,y+\Delta y) - u(x,y) }{\Delta y} + \frac{ v(x,y+\Delta y) - v(x,y) }{\Delta y} = -i\frac{\partial u}{\partial y} + \frac{\partial v}{\partial y}

これで2つの結果が等しくなれば良いので
 \frac{\partial u}{\partial x} + i\frac{\partial v}{\partial x} =  -i\frac{\partial u}{\partial y} + \frac{\partial v}{\partial y}
ここで係数比較で
 \frac{\partial v}{\partial x} =  -\frac{\partial u}{\partial y} \frac{\partial u}{\partial x} = \frac{\partial v}{\partial y}
簡略化して書くと
u_x=v_yu_y = -v_x
の2つの微分方程式が得られる.
この微分方程式が,関数f微分できる必要条件になる.

これをコーシーリーマン方程式と言う.このブログではCauchy - Riemann方程式の2人の頭文字をとりCR方程式と記すことにする.

十分条件

次に関数fはCR方程式が満たされれば微分可能なのか?という十分条件も示さなくてはいけない.
この章の残りはf(z)がCR方程式を満たせば\frac{f(z+h) - f(z)}{h}が一意に定まることを目標にしていく.
\frac{f(z+h) - f(z)}{h} = \frac{ u(x+\Delta x,y+\Delta y) - u(x,y) }{\Delta x + i\Delta y} + i\frac{ v(x+\Delta x,y+\Delta y) - v(x,y) }{\Delta x + i\Delta y}
からスタートする.
実関数の平均値の定理f'(x) = \frac{f(b) - f(a)}{b-a}は,(a,f(a))(b,f(b))を結ぶ直線の傾きと同じ接線の傾きをもつ点がaからbまでの間に存在するというものなので,b = a+\Delta a0<\theta<1となる\thetaを用いて
f'(x+\theta\Delta a) = \frac{f(a + \Delta a) - f(a)}{\Delta a}f'(x+\theta\Delta a)\Delta a = f(a + \Delta a) - f(a)
と表現することができる.

h = \Delta x + i\Delta yとすると
\frac{f(z+h) - f(z)}{h} = \frac{ u(x+\Delta x,y+\Delta y) - u(x,y) }{\Delta x + i\Delta y} + i\frac{ v(x+\Delta x,y+\Delta y) - v(x,y) }{\Delta x + i\Delta y}
この式は平均値の定理を用いるには二変数が関わっているので扱いづらい.
ここからは式がごちゃごちゃするので先にuを取り出して考える.

u(x+\Delta x,y+\Delta y) - u(x,y) = u(x+\Delta x,y+\Delta y) - u(x,y+\Delta y) + u(x,y+\Delta y) - u(x,y)
- u(x,y+\Delta y) + u(x,y+\Delta y)を間に入れてやる.
すると平均値の定理が1変数で扱うことができて
u_x(x+\theta_x\Delta x,y+\Delta y)\Delta x + u_y(x,y+\theta_y\Delta y)\Delta y
とシンプルになる.
次にu_x(x,y)\Delta x - u_x(x,y)\Delta x + u_y(x,y)\Delta y - u_y(x,y)\Delta yを足して
u_x(x+\theta_x\Delta x,y+\Delta y)\Delta x + u_y(x,y+\theta_y\Delta y)\Delta y + u_x(x,y)\Delta x - u_x(x,y)\Delta x + u_y(x,y)\Delta y - u_y(x,y)\Delta y
整理して
u_x(x,y)\Delta x + u_y(x,y)\Delta y + \left(u_x(x+\theta_x\Delta x,y+\Delta y) - u_x(x,y)\right)\Delta x + \left(u_y(x,y+\theta_y\Delta y) - u_y(x,y)\right)\Delta y
という形にする.
\left(u_x(x+\theta_x\Delta x,y+\Delta y) - u_x(x,y)\right)\Delta x\left(u_y(x,y+\theta_y\Delta y) - u_y(x,y)\right)\Delta y
h\to 0と極限を取る際に0になるので誤差項という扱いでEに省略して
u_x(x,y)\Delta x + u_y(x,y)\Delta y + E_1(h)\Delta x + E_2(h)\Delta y
という形にまとめてやる.

vに関しても同様に計算を行い
v_x(x,y)\Delta x + v_y(x,y)\Delta y + E_3(h)\Delta x + E_4(h)\Delta y
という形にする.


これでE_1 + E_3 = E_5E_2 + E_4 = E_6とまとめると
f(z+h) - f(z) = \left(u_x(x,y)\Delta x + u_y(x,y)\Delta y\right) + i\left(v_x(x,y)\Delta x + v_y(x,y)\Delta y\right) + E_5(h)\Delta x + E_6(h)\Delta y
になる.

ここでようやくCR関係式を満たす場合という条件を用いる.
u_x=v_yu_y = -v_x
の関係式を用いて
f(z+h) - f(z) = \left(u_x(x,y)\Delta x - v_x(x,y)\Delta y\right) + i\left(v_x(x,y)\Delta x + u_x(x,y)\Delta y\right) + E_5(h)\Delta x + E_6(h)\Delta y

これをまとめると
f(z+h) - f(z) = u_x(x,y)(\Delta x + i\Delta y) + v_x(x,y)(\Delta x + i\Delta y) + E_5(h)\Delta x + E_6(h)\Delta y
ここでh = \Delta x + i\Delta yと置いていたので
f(z+h) - f(z) = u_x(x,y)h + v_x(x,y)h + E_5(h)\Delta x + E_6(h)\Delta y
両辺をhで割ると
\frac{f(z+h) - f(z)}{h} = u_x(x,y) + v_x(x,y) + E_5(h)\frac{\Delta x}{h} + E_6(h)\frac{\Delta y}{h}

こうしてh\to 0と極限を取ると\left|\frac{\Delta x}{h}\right| \leq 1 \left|\frac{\Delta y}{h}\right| \leq 1 E\to 0になるので
f'(x,y) = u_x(x,y) + v_x(x,y)
になり,極限の取り方に依拠しないことが示せた.


実際に微分する際はz = u(x,y) + iy(x,y)ならu(x,y) = x及びv(x,y) = yになり,CR方程式を満たす.
実軸方向の微分だけでことが済むのでz' = 1 + 0 = 1z' = 1が示せた!やったね!

微分公式

実関数と同様にすれば
f(z)g(z) = f'(z)g(z) + f(z)g'(z)
f(g(z)) = f'(g(z))g'(z)
がわかる.
特に後者の
f(g(z)) = f'(g(z))g'(z)
については実関数の微分もそうだけど連鎖律って話があって,\left(y(u(x))\right)'を計算すると
\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du}\cdot\frac{du}{dx}
といったような,分子分母が打ち消し合うようにduが存在するような式になる.

初等関数の微分

例えば指数関数は実数x,y\in \mathbb{R}を用いて
e^{z} = e^{x+iy} = e^x\left(\cos{y} + i\sin{y}\right)
であるため
u(x,y) = e^x\cos{y}v(x,y) = e^x\sin{y}
になる.
u,v偏微分すると
u_x(x,y) = e^x\cos{y}u_y(x,y) = -e^x\sin{y}
v_x(x,y) = e^x\sin{y}v_y(x,y) = e^x\cos{y}
になり,CR方程式を満たすので微分可能.
実軸から極限をとるように微分をすると
e^z = e^x\cos{y} + ie^x\sin{y} = e^z
と実関数と同様に元の関数に戻る.

これを利用すると
(\sin{z})' = \left(\frac{e^{iz} - e^{-iz}}{2i}\right)' = \frac{e^{iz} + e^{-iz}}{2} = \cos{z}
(\cos{z})' = \left(\frac{e^{iz} + e^{-iz}}{2i}\right)' = i\frac{e^{iz} - e^{-iz}}{2} = \sin{z}
(\log{z})' = \frac{1}{z}
(z^\alpha)' = \left(e^{\alpha \log{z}}\right)' = \frac{\alpha}{z}e^{\alpha\log{z}} = \alpha z^{\alpha - 1}
が得られ,実関数と同じ結果になる.



とりあえず微分までまとめた.
積分以降は次の記事にまとめることにしようかな.

参考文献

複素解析 (東京大学出版会
数理科学のための複素関数論 (サイエンス社
複素解析 (現代数学社
プリンストン解析学講義 複素解析 (日本評論社
道具としての複素関数 (日本実業出版社