今回の目標は式を展開すること.
ここまで記述しといたら大丈夫かなって思った.(何が)
テイラー展開
簡単な展開方法は,前回のコーシーの積分公式
を用いること.
ここで積分経路はを中心とした円だった.
この積分経路の円はを含めているならいくらでも広げることができるので,広げた積分経路の円の中心をと起き,円の半径をとする.
次に分母にを足し,
分母の計算順序を変え
変形をする
次に等比級数の式
はの時に成立するので,,なのでであるため
と変形をすることができ,この式を整理してやると
になる.
実関数と見た目が違うぞ?って思うかもしれないけど,コーシーの積分公式は
なので,この式を用いると
という見慣れた式に落ち着く.
この式は明らかに冪級数展開であり,正則であるならば冪級数展開可能.
一致の定理の言い換え
ここで記事(1)で書いた一致の定理等の諸定理も
aryuaryuaryuryu.hatenablog.com
冪級数展開可能な関数の零点は孤立する
という定理は
正則範囲内の関数の零点は孤立する
正則関数とが,ある集合全体でとなら正則範囲全体で
というように書き直すことができる.
ローラン展開
導入
テイラー展開は正則点を中心とした展開だったが,正則でない点(特異点)を中心とした展開もたまにしたくなるときがある.
そういう場合を考えてみたい.
正則点を中心とした円の積分は
になる.
今回はここから積分経路を変形していくが,展開中心を中心とする半径の円と,を中心としてを含まず,の内部に収まるような半径の円の積分路を作る.
そして
に関しては
テイラー展開と同様に点を中心とするとなので
より
同様にに関しては点を中心とするとなので
値の帳尻をあわせて
となるので
という展開が得られる.
この展開をローラン展開という.
シンプルに書くと
関数の展開は数列を用いて
と表すことができ,この展開をローラン展開という.
実際にローラン展開を計算する
ローラン展開の式はわかったけど,実際にローラン展開をするというのは難しく,テイラー展開を利用した展開が主なものになる.
例1
高校数学でも扱う等に関して,原点中心の展開は,テイラー展開を用いると
という展開ができる.
例2
例えばの原点中心の展開は,等比級数の公式から
であり,収束半径はになる.
例3
他にはの原点中心の展開は,テイラー展開から
と展開ができる.
いくつかの特異点の種類
ローラン展開は大きく分けて,指数部が負の部分と0以上の部分に分けることができる.
零点
テイラー展開や除去可能特異点による展開により
という形になる場合ももちろんあり,となる場合ももちろんある.
この時,となる最小のを用いて
と変形することができる.
この時,展開中心を位の零点と言う.
留数
ローラン展開した結果
となるが,特にの係数を留数という.
基本的に色々な記述方法があるが,ここでは関数の点での留数はと記述することにする.