複素解析のメモ(4)(積分)
とりあえず複素解析の応用のメモ
三角関数を含む積分
ジョルダンの補題
広義積分を行う際,ジョルダンの補題を使うと留数計算でカタがつく場合がある.
原点を中心とした半径の上半円を描き,正方向に上半円の円弧上を通る積分を行い,からに戻る経路を通る.
この時,とすると上半円の円弧の部分の積分結果がになる場合があり,その場合は上半円の留数計算のみでの計算ができてしまう.
この0になる場合をジョルダンの補題という.
0になる場合1
としたとき,上のに対し,適当な定数を用いてを満たす時について考える.
するとを満たす.
理由としては,になり,と極限を取ると0に収束するため.
状況を考えやすいのは
のような関数の場合,
このときの場合という条件がつけばとなる定数が存在する.
は0に収束するか,何らかの値をとるかのいずれかになる.
0になる場合2
次は有理関数に三角関数が乗じられている場合等にも応用ができる.
としたとき,上のに対し,適当な定数を用いてを満たす時について考える.
とすると
となる.
今回の目標は正数に対しになることを示す.
とすると
であり,
と評価ができる.
ここででなので
仮定として『適当な定数を用いてを満たす時』という条件があったので
ここでの性質から
するとの間でを満たし,が成り立つので,
右辺を評価すると
あとはと極限を取ると
となることが示すことができる.
状況を考えやすいのは
とした場合,の場合という条件がつくことで今回の条件を満たす.
コーシーの主値を取る場合
ジョルダンの補題を用いて留数計算のみで積分計算ができるのは実軸上に極がない場合のみで,実軸上に極が存在する場合はコーシーの主値を取って考える必要がある.
コーシーの主値とは,実積分において,上に非連続となる点が存在する場合,
のように非連続となる点を避けるように積分をし,としたもの.
コーシーの主値を取る場合はと表記される場合もある.
例えば対数積分は被積分関数がで非連続であるため
というコーシーの主値をとる.
複素積分では正方向に移動する実軸上の経路の場合,上半平面方向に半径の半円を描き,積分経路の一部とすることが多く,留数計算した後にの積分結果を引くことが多い.
ディリクレ積分
が取り上げられやすい.この積分はディリクレ積分という.
ここでは複素積分する被積分関数をとする.
これは原点で極をとるので,からまで実軸を通り()原点を回避し()からまで実軸を通り(),からまでは半径の上半円を戻ってくる()ように設定する.
この積分内部に極は存在せず正則なのでこの積分結果自体は0になる.
全体の積分を分けて考えると原点まわりの半円が負方向の積分で,実軸上の積分は実積分なので
に分解できる.
また第一項については
と変形できるので
になる.
ここでに注意して式を整理すると
とまとめられる.
ここでの積分は,と置換すると
になり,と極限をとると
とシンプルにまとまる.
またの積分はジョルダンの補題よりのとき0になるので,全体の結果としては
になり,よって
が得られる.
このように留数定理を使えば積分をどうにか計算できたりもできるらしい.
他の応用例としてはフーリエ変換とかラプラス逆変換とからしいけど,ラプラス変換自体は大体は表を見比べて計算することがほとんどなのでなんとも・・・