以前似たような記事を書いていたのですが,少し気に入らなかったので書き直します.
なんか楕円曲線とかの話が気になったので調べたことをまとめます.
ざっくりとした結論
楕円積分
楕円の弧長と楕円積分
楕円
の弧長を計算する.今回,角度はy軸の正の箇所から時計回りにとることにする.
これはパラメタをと変化させた弧長ならば
とでき,を用いると
になり,とおくと
になるが,これ以上計算のしようはない.
ここで係数を除いた部分をパラメタとを用いて
と定義し,これを第二種楕円積分とする.
ちなみに
を第二種完全楕円積分とよび,楕円の弧長はと計算ができる.
この被積分関数を逆数にしたもの
を第一種楕円積分と呼び,
を第一種完全楕円積分と呼ぶ.*3ここでではなくと置くのが習わしらしい.・・・よくわからん
これはレムニスケート
と関係がある.
楕円関数
楕円関数の登場
例えば
になることから,レムニスケートについての関数も作れそうな気がする.
そこでレムニスケートの弧長についての関数
を定義してみると,は容易にわかるので定義域はとできる.
次にの逆関数を定義する.
もちろんとであることからがわかる.
次に定義域を拡張していくが,第一象限と第四象限ではを正の長さ,第二象限と第三象限ではを負の長さと定義する.
すると及び
を満たすので自然になり,またレムニスケートをひとまわりする弧長はであり,これがそのまま周期になる.
簡単な公式としてはがすぐわかる.
また三角関数と同じようにが定義できる.
これらをレムニスケートからの関数ということで,レムニスケート関数と呼ぶことにする.
このレムニスケート関数は加法定理
,
を満たす.
これは第一種楕円積分
によって定義されるヤコビの楕円関数,,の加法定理から得られるもので,
ヤコビの楕円関数自体はパラメタによって性質がだったりだったりするもので,推測が行いやすい.*5
レムニスケート関数の加法定理を証明するにはと固定しての関数にしてやり
,
をグリグリ動かしても結果が変わらない,定数であることを示せば良く,
,
の結果を示すことができれば終わる.
また示す過程での関係式も得られる.
レムニスケート関数を複素関数に
レムニスケート関数の複素関数版について考えるにあたって
について考えてみたい.
被積分関数はのテイラー展開
について
なので
と展開でき,項別積分を行うことによって
が得られるが,なので,虚数を乗じたを代入すると
に変形ができてしまうので
がわかる.
これで加法定理を使えば
が得られ,とはそれぞれ独立してとの引数になっていて
が成立してしまうので,実軸方向と虚軸方向の2方向に周期を持つ二重周期関数ができあがってしまう.
このように,第一種楕円積分から関数を作ると二重周期関数ができてしまったことにより,有理型*6の二重周期関数を楕円関数とも言ったりする.
二重周期関数の性質
となる周期,の2つを持つ有理型関数を楕円関数という.
複素数平面上に平行四辺形型の周期を持ち,最小の周期の平行四辺形を基本周期平行四辺形という.
平行四辺形自体は向かい合う辺で繋がっているため,複素トーラス上の関数とも言える.
有理型関数という前提があるため,リウヴィルの定理*7から基本周期平行四辺形のどこかに極を持っているか,定数関数のいずれかになる.
しかし基本周期平行四辺形の周囲をぐるっと周るように積分を行うと,対面の辺同士で打ち消すため,積分結果は0になるが,1位の極1つのみの場合は留数定理から積分結果は0にならない.
つまり,定数関数でない楕円関数は極を2つ以上持つことになる.(位の極は個と数える)
ワイエルシュトラスの関数
極が2つ存在して2つ周期があるというのなら,となる周期,の2つを使った関数を作ってみたいが,
周期を片方1にし,としたほうが変数が1つ減る分わかりやすい.
そうして簡単に作れそうな二重周期関数というと
と定義した関数を作ることができる.
ここで分母が2乗されているのは,しない場合収束しないということと,を引いているのも収束の兼ね合いの問題.
これを項別積分することで
が得られ,がとの周期を持つことで
であることがわかり,が偶関数であることから
とすることで定数項はであることがわかるので,との2つの周期を持った関数が作れたことが示せる.
関数の展開
についてとおいて
とする.
を計算すると
になるので
と展開すると
になる.
のとき
であることが容易に説明できるから
が得られる.
楕円曲線
楕円曲線の誕生
ワイエルシュトラス関数の展開について係数を簡略化して書いたもの
について両辺を微分すると
になる.
このとの極,との項を消してみたいので
とについて最初の三項を取り出して計算してみると
になるので
としてやると
とちょうどよく2位の極が浮き出る形になる.
そこで
を足すと右辺は適当な関数が存在して
と書ける.定数項を左辺に移すと
になる.
左辺は楕円関数を組み合わせたものだから左辺まるごと極を取り除くことができた周期関数になり,右辺はの関数になる.
リウヴィルの定理より発散しない整関数は定数関数になり,右辺は原点で0である定数関数なので,右辺は0になる.
こうして式を整理し
と置換すると
になる.
ペー関数の加法定理
レムニスケート関数のに加法定理があったようににも加法定理が存在する.
とすると
となることを最初に示す.
この流れは,について考えた後,楕円関数において,基本周期平行四辺形内の零点と極の個数が一緒になること,零点の和と極の点の和は周期を法として合同になることを用いる.
最初に楕円積分は基本周期平行四辺形内部の零点と極の個数が一緒になることを示そう.
偏角の原理
正則関数において
は零点の個数と極の個数の差になる.
まず偏角の原理から.
正則関数において
は極の個数と零点の個数の差になることを示す.
について,がにおいて位の極・零点を持つとすると,である適切なを用いて
と表すことができるので
になる.
これで
になるが,はで0や極にならないのででは正則で,はで留数を持つ一位の極になる.
零点になる場合はは正,極になる場合はは負になるので,留数定理から
が得られる.は積分内部の零点の個数,は積分内部の極の個数とする.
一般化した偏角の原理
正則関数と正則関数において,積分内部の零点を,極の点をとすると
になる.
ただしは周りの回転数.
が得られる.
は正則関数でと展開できるので
で
になる.
全体は極を持たないので一周するとごっそり消えるので題意を満たす.
零点と極の個数が同じになることを示す
楕円関数は基本周期平行四辺形内の零点と極の個数が一緒になる.
偏角の原理を利用して考える.
基本周期平行四辺形の辺に沿って一周するように積分を行うと,は楕円関数なので基本周期平行四辺形の互いの辺同士で打ち消し合うので積分結果は0になる.
しかし偏角の原理で
が示されているので零点と極の個数は同じという結論が得られる.
零点の和と極の点の和は周期を法として合同になることを示す
零点の和と極の点の和は周期を法として合同
これはどういうことかというと,になる点との極の点の和が周期を法として合同になるということ.
周期と合同というのは,二重周期である2つの周期とを使うとになるということ.
これは最初に基本周期平行四辺形の辺を辿って一周する積分
について考えてみたい.
これは
と変形をして,向かい合う辺同士の計算
について考えると,と置換して
と計算でき,なので
にでき,これの積分結果は
になる.だが,であるため
になるので
とできる.
これをもう片方の辺の組み合わせでもやると
という結果になる.
積分自体は積分経路は一周しているだけなので,一般化した偏角の原理を用いて零点と極の差であることがわかるので題意を満たした.
ワイエルシュトラスの楕円関数の加法定理
これでようやく
とすると
を示すことができる.
最初にについて考えるとは楕円関数になる.
これはでは三位の極,は二位の極なので,はで三位の極になり,基本周期平行四辺形内部に他に極は存在しない.
すると,極と零点の個数は同じなので2つの零点をととすると
になる.
もう1つの零点をとし,極の点は全て原点なので極の点の和は0であることから,零点の和と極の点の和は周期を法として合同になるので
になる.
こうして
が線形従属であることがわかるので
が示せる.
こうして
を満たす3点の存在が確認できた.
ちなみには偶関数なのでとなることを今後利用する.
とするとの零点はの三点になり,
の関係式を用いると
が得られる.
,,を解に持つ三次方程式は
と展開できる.
ここで解と係数の関係からであり,解は,,なので
になる.
あとはについて解いてやればよくて
の連立方程式から
が容易に得られるので
これを利用すると
が得られる.これは
と注意しての極限をとってやればよい.
楕円曲線上の加法
楕円曲線
上の2点及びを通る直線を引き,もう1点と交わる箇所とx軸に対象な点をと置く.
楕円曲線はx軸に対象な曲線になるのでも楕円曲線上の点になる.
この点は
で得られる.
次にワイエルシュトラスの加法定理について比較する.
ワイエルシュトラス自体
を満たすが,式変形を行い
とするとに対応することに注意する.
加法定理は
なので,
と変形できるため,
とダイレクトに関わりがあることがわかり,楕円曲線の2点及びを通る直線を引き,もう1点と交わる箇所とx軸に対象な点をと置くという動作は交換法則どころか結合法則まで容易に満たすことがわかる.
単位元は無限遠点とし,無限遠点と点[P(x_1,y_1)]を結ぶ直線はとする.そしての逆元はとすると,この楕円曲線上の作図はアーベル群を成す.
このアーベル群が楕円曲線上の加法になる.
とりあえずなんとなく今のところ調べたところまでを書き綴りました.