音楽室と化学室と美術室とPC室の融合部屋 所謂自由室

趣味と気分で適当に色々やります.なんかあるとたまに更新します.

2つの平方の和で表すことができる数についてのメモ(1)

まえがき

2つの平方数の数の和で表すことができる数は何でしょう?

この問題は難しいので,少しやんわりとするなら

2つの平方数の数の和で表すことができる素数は何でしょう?

これについては例えば
1^2 + 1^2 = 2
1^2 + 2^2 = 5
2^2 + 3^2 = 13
1^2 + 6^2 = 17
2^2 + 5^2 = 29
等がありますね.

素数については1^2 + 1^2 = 2のみなので今後考えないとして,奇素数で考えるなら

4で割って1余る奇素数は,2つの平方の和で表すことができ,2つの平方の和で表すことができる素数は4で割って1余る

という法則があります.

ちなみに2つの平方の和で表すことができる数同士の積は
(a^2 + b^2)(c^2 + d^2) = a^2c^2 + a^2d^2 + b^2c^2 + b^2d^2 \\= ((ac)^2 + (bd)^2 + 2abcd) + ((ad)^2 + (bc)^2 - 2abcd) = (ac + bd)^2 + (ad - bc)^2
となり,結局2つの平方の和で表すことができます.

次に2つの平方の和で表すことができない数が素因数に含まれている場合は
a^2 (b^2 + c^2) = (ab)^2 + (ac)^2
とできるので,2つの平方の和で表すことができない数の素因数は偶数乗であれば大丈夫.

つまり,

2つの平方数の和で表すことができるということは,素因数分解の結果が4で割って3余る素数が偶数乗であることが必要十分

ということになります.


以下は

4で割って1余る奇素数は,2つの平方の和で表すことができ,2つの平方の和で表すことができる奇素数は4で割って1余る

というお話の証明についてです.


2つの平方の和で表すことができる素数は4で割って1余ることの証明

最初に

2つの平方の和で表すことができる素数は4で割って1余る

については
(2n+1)^2 + (2m)^2 = (4n^2 + 4n + 1) + 4m^2 = 4(n^2 + n + m) + 1
と自明.

4で割って1余る素数は2つの平方の和で表すことができることの証明

難しいのは

4で割って1余る素数は2つの平方の和で表すことができる

の方.

この証明には第一補充法則

\left(\frac{-1}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}

を用います.
ここで\left(\frac{-1}{p}\right)ルジャンドル記号であり,分数ではありません.
詳しくは以下の記事を参照.
aryuaryuaryuryu.hatenablog.com

この第一補充法則は,素数pが4で割って1余るならr^2 \equiv -1 \pmod{p}を満たすrが存在することを示します.
これは最終的にr^2 \equiv -1 \pmod{p}であることを用いるため,大切なキーになります.
以下rr^2 \equiv -1 \pmod{p}を満たすものとします.


次に
0\leq x < [\sqrt{p}]
0\leq y < [\sqrt{p}]
となるx,yについて考える.
このx,yの取り方はそれぞれ0,1,2,3,\cdots,[\sqrt{p}][\sqrt{p}] + 1通り存在する.

つまり,(x,y)の取り方はp通り以上存在する.
つまりx-ryの組み合わせでpを法として合同となる組み合わせは存在するので,
x_1 - ry_1\equiv x_2 - ry_2 \pmod{p}
という関係になる(x_1,y_1),(x_2,y_2)が存在することがわかる.

ここで
(x_1-x_2) \equiv r(y_1 - y_2) \pmod{p}
と移項を行い両辺を二乗すると
(x_1-x_2)^2 \equiv r^2(y_1 - y_2)^2 \pmod{p}
ここでrr^2 \equiv -1 \pmod{p}の解を前提としていたので
(x_1-x_2)^2 \equiv -(y_1 - y_2)^2 \pmod{p}
よって(x_1 - x_2)^2 = X^2(y_1 - y_2)^2 = Y^2と置くと
X^2 + Y^2 \equiv 0 \pmod{p}
となる(X,Y)の組み合わせが示せる.

だがX^2 + Y^2pの倍数になる(X,Y)の存在は示したが,pであることを示すには・・・?

というと,実は
0\leq x < [\sqrt{p}]
0\leq y < [\sqrt{p}]
を前提に考えていたので,X^2 + Y^22p以上になることはない.

つまり2p未満の正のpの倍数となるとpに限定される.


よって

4で割って1余る素数は,2つの平方の和で表すことができ,2つの平方の和で表すことができる素数は4で割って1余る

ということを示すことができた.