音楽室と化学室と美術室とPC室の融合部屋 所謂自由室

趣味と気分で適当に色々やります.なんかあるとたまに更新します.

五角数と分割数

皆さん三角数って知ってますよね?

そうです,1+2+3+4+\cdots + n = \frac{n(n+1)}{2}といったやつです.
なんで三角数というのかというと,

f:id:Aryuaryuaryuryu:20211130214504p:plain
三角数の図

といったように三角形にモノを並べていく時の総数だからですね.

見ての通り
a_1 =1\\
a_{n+1} = a_n + n
の漸化式からa_n = \frac{n(n+1)}{2}で表せます.


四角数は平方数ですね.a_n = n^2
f:id:Aryuaryuaryuryu:20211130214807p:plain


そして五角数.
こいつは
f:id:Aryuaryuaryuryu:20211130215327p:plain
このような形で増加していき,漸化式は
a_{n+1} = a_n + 3n + 1
すなわち
a_n = \frac{n(3n-1)}{2}
になります.

今回はこの五角数が関わる定理と,分割数について調べてみました.



五角数定理

導出

五角数定理は前回のヤコビの三重積
aryuaryuaryuryu.hatenablog.com
の特殊な場合で
\sum_{m=-\infty}^{\infty}q^{m^2}e^{2\pi imz} = \prod_{n=1}^{\infty}(1-q^{2n})(1+q^{2n-1}e^{2\pi iz})(1+q^{2n-1}e^{-2\pi iz})
という等式に対し
q = x^{\frac{3}{2}}e^{2\pi iz} = -x^{-\frac{1}{2}}を代入すると,右辺は
\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{3n})(1+x^{\frac{6n-3}{2}}(-x^{-\frac{1}{2}}))(1+x^{\frac{6n-3}{2}}(-x^{\frac{1}{2}}))\\
= \prod_{n=1}^{\infty}(1-x^{3n})(1-x^{3n-2})(1-x^{3n-1})\\
=\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n)
となる.
最後の変形は3n3n-13n-2を一つにまとめ上げた.

左辺は
\sum_{n=-\infty}^{\infty}x^{\frac{3n^2}{2}}(-x^{-\frac{1}{2}})^n\\
= \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^nx^{\frac{n(3n-1)}{2}}
といったように
xの指数に五角数が出てくる.

つまり
\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^nx^{\frac{n(3n-1)}{2}}
という式になる.これが五角数定理という.収束域は|x| < 1になる.

分割数

定義

唐突ですが,分割数というものがあります.

例えば3の数値を正の数の和で表す方法(順番は考えない)についてですが
3 = 3 = 2+1 = 1 + 1 + 1
の3通りとなります.
例えば 3 = 2 + 1 = 1 + 2のような分割は同じものとして考えることにします.

その分割の方法が何通りあるかというものをp(n)といった感じに表します.今回の場合はp(3) = 3です.

この分割数は数学ガールの村木先生からのカードでは

額面が,1円,2円,3円,4円,・・・・・・になっているコインがあるとする.
合計n円を支払うためのコインの組み合わせが何通りあるかを考えよう.
この組み合わせの個数をP_nとする.

と紹介されています.
www.amazon.co.jp



五角数と分割数

五角数定理と分割数にどのような関係性があるかというと
\left(\sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{n(3m-1)}{2}}\right)^{-1} = \prod_{n=1}^{\infty}\frac{1}{1-x^n} = \sum_{k=0}^{\infty}p(k)x^k
という式が成り立ちます.

どういうことかというと,|x|<1のときは当然
\frac{1}{1-x} = 1 + x + x^2 + x^3 + \cdots
となります.
言い換えると
\frac{1}{1-x} = 1 + x^1 + x^{1+1} + x^{1+1+1} + \cdots
です.

同様に
\frac{1}{1-x^2} = 1 + x^2 + x^{2+2} + x^{2+2+2} + \cdots
\frac{1}{1-x^3} = 1 + x^3 + x^{3+3} + x^{3+3+3} + \cdots
\cdots
と続いていきます.

これを全て掛け合わせると
(1+x^1 + x^{1+1} + x^{1+1+1} + \cdots)(1 + x^2 + x^{2+2} + x^{2+2+2} + \cdots)(1+x^3 + x^{3+3} + x^{3+3+3} + \cdots)\cdots
になります.

ここでx^aの係数はいくらになるでしょう?
となると,例えばa=3の場合は,x^3になる通り数は
x^{1+1+1}
x^{2}\cdot x^1
x^{3}
の3つの和なので3が係数になります.

そうです.x^aの係数はp(a)になっています.


ここで\prod_{n=1}^{\infty}\frac{1}{1-x^n}というと,先程の五角数定理
\prod_{n=1}^{\infty}(1-x^n) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^nx^{\frac{n(3n-1)}{2}}
のちょうど逆数なので

\left(\sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}}\right)^{-1} = \prod_{n=1}^{\infty}\frac{1}{1-x^n} = \sum_{k=0}^{\infty}p(k)x^k
になります.


分割数についての式

これで分割数について簡単に計算できそうな式を出せないかという話になります.

ここでちょうど
\left(\sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}}\right)^{-1} = \sum_{k=0}^{\infty}p(k)x^k
という関係なので
 1 = \left(\sum_{k=0}^{\infty}p(k)x^k\right)\left(\sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}}\right)
という恒等式を用いて考えてみましょう.

式を整理する

まず総和同士の積は,総和の範囲を揃えたほうが考えやすい.
そこで
 \sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}}\\
 = \sum_{m=1}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}} + \sum_{m=1}^{\infty}(-1)^m x^{\frac{m(3m+1)}{2}} + (-1)^0x^0\\
= 1 + \sum_{m=1}^{\infty}(-1)^m\left(x^{\frac{m(3m-1)}{2}} + x^{\frac{m(3m+1)}{2}}\right)
として,
 \sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}} = \sum_{m=0}^{\infty}s(m)x^m
とまとめる.
ただしs(m)は,
m自然数n\in\mathbb{N}に対し\frac{n(3n\pm 1)}{2}で表すことができる場合,s(m) = (-1)^nとする.
m自然数n\in\mathbb{N}に対し\frac{n(3n\pm 1)}{2}で表すことができない場合,s(m) = 0とする.

今後はこの式
 \sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}} = \sum_{m=0}^{\infty}s(m)x^m
を使って考えていきたい.

恒等式を計算する

先程の式を使って
 1 = \left(\sum_{n=0}^{\infty}p(n)x^n\right)\left(\sum_{m=-\infty}^{\infty}(-1)^mx^{\frac{m(3m-1)}{2}}\right)\\
 = \left(\sum_{n=0}^{\infty}p(n)x^n\right)\left(\sum_{m=0}^{\infty}s(m)x^m\right)\\
 = \sum_{n=0}^{\infty}\sum_{m=0}^{\infty}p(n)s(m)x^{n+m}
と式変形を行う.
ここでu = n+mv = mと変数変換を行うと
 1  = \sum_{u=0}^{\infty}\sum_{v=0}^{u}p(u-v)s(v)x^{u}
になる.
左右は恒等式なので,定数項のu=0に着目すると
 1  = p(0)s(0)
ここでs(0) = 1なのでp(0) = 1


同様にu>0に対しx^uの項に着目すると,恒等式xに依存しないので
 \sum_{v=0}^{u}p(u-v)s(v) = 0
にならないといけない.

ここで
 \sum_{v=1}^{u}p(u-v)s(v)+ p(u)s(0) = 0
と分割を行いs(0) = 1なので
p(u) = -\sum_{v=1}^{u}p(u-v)s(v)
とすることで,分割数についての式が得られる.

s(v)については,\frac{n(3n\pm 1)}{2}番目が(-1)^nになることを考えると
n=0のとき\frac{0(3\cdot 0 \pm 1)}{2} = 0なのでs(0) = (-1)^0 = 1(使わない)
n=1のとき\frac{1(3\cdot 1 \pm 1)}{2} = 1,2なのでs(1) = s(2) = (-1)^1 = -1
n=2のとき\frac{2(3\cdot 2 \pm 1)}{2} = 5,7なのでs(5) = s(7) = (-1)^{2} = 1
n=3のとき\frac{3(3\cdot 3 \pm 1)}{2} = 12,15なのでs(12) = s(15) = (-1)^{3} = -1
\cdots

となるので
p(u) = -\sum_{v=1}^{u}p(u-v)s(v)\\
= p(u-1) + p(u-2) - p(u-5) - p(u-7) + p(u-12) + p(u-15) - \cdots - s(u)p(0)
になる.


最後にunに置き換えて,l<0の場合p(l) = 0とすれば,
p(n) = p(n-1) + p(n-2) - p(n-5) - p(n-7) + p(n-12) + p(n-15) - \cdots

と興味深い式ができあがる.