音楽室と化学室と美術室とPC室の融合部屋 所謂自由室

趣味と気分で適当に色々やります.なんかあるとたまに更新します.

極限についてのお話(1)

Twitterのゲーム仲間のツイートで「極限についてわからん」とか「無限大がよくわからない」って文字列をよく見るので,とりあえずまとめてみようと思いました.
大学数学っぽい内容に足を突っ込んでいますが,具体的なイメージが欲しい方のために書き綴ります.

極限について

ズバリ言うと,「いくらでも極端なものを言ってみろ!それより更に凄いものを用意してやる」という状態です.
・・・と言ってもわからないですよね.

そこで,Aに収束する数列
\lim_{n\to \infty} a_n = A
について,『nを限りなく増やすとa_nAに近づく』と高校数学では説明されるけど,実際「近づく」ということはどういうことなのだろう?

ということから始めましょう.

「限りなく近づく」とは?

じゃぁ『限り無く近づく』というのはどういうことなのか?
それを考えるために『誤差』というものを考えます.

例えば数列\{a_n\}と数値Aについて誤差|A-a_n|を考えます.
「限り無く近づく」ということは,この誤差が限りなく0に近づくということですが,その『近づく』とはどういうことなのでしょうか.

それを考えるために『いくらでも小さい値を言ってみろ』と問うわけです.
そうです,限りなく近づくのなら『数列を進めていくと,いつかは誤差はその値より小さくなる』のです.

そこをひっくるめて言うと,『いくらでも小さい誤差を言ってみろ,あるN以上なら|a_n-A|がその誤差より小さくなるようなNを用意してやる』という状態です.
それをひっくるめて言うと
\forall \varepsilon > 0,\exists N\in \mathbb{N}\ s.t.\ n\geq N \Rightarrow |a_n - A| < \varepsilon
となりますが,ざっくり説明すると
『どんな\varepsilonを用意されたとしても,とある自然数N以上のnについてa_nAの誤差が\varepsilonより小さくなるNを用意できる』
という内容です.

この
\forall \varepsilon > 0,\exists N\in \mathbb{N}\ s.t.\ n\geq N \Rightarrow |a_n - A| < \varepsilon
については,『イプシロンーエヌ論法』と言うようです.

例えばですが
a_n = \frac{1}{n}
について考えてみます.
これはn\to \inftyのときにa_n = 0になります.
そこで\varepsilon = 0.001という値を出されたとします.
その場合は「ざんね~ん!n > 1000の時にずっと誤差はその値未満になりますー!」と言えちゃうわけです.

この例の本題としては
\lim_{n\to \infty} \frac{1}{n} = 0
ですが,これを言い換えると
どんな誤差\varepsilonを出されたとしても,n>\frac{1}{\varepsilon}ならばその誤差よりも小さくなります.


無限大ってなぁに?

極限で出てくる定番の『無限大』ですが,無限大とはどういう数字なのでしょうか?・・・というとツッコまれるので本題に行きましょう.
無限大についてですが,先程のイプシロンーエヌ論法を元に考えます.

無限大についてですが,「どんな数も大きい数」とか「限りなく大きい数」とか説明されますが,そもそも「数ではない」です.

無限大は数ではないです

どちらかというと,『具体的な数ではない概念』です.
ではどのように無限大についての説明をするかというと,今度は「いくらでも大きい数を用意してみろ,もっと大きい数を用意できるぞ」という状態です.

さっきの「いくらでも小さい値を言ってみろ」と逆の「いくらでも大きい値を言ってみろ」という状態です.
例えば
\lim_{n\to \infty} n^2 = \infty
についてですが,例えば10000という数字を出されると
「そんな数字でいいのか!n > 100のときにそれより大きい数になるぞ!」となりますね.
正直Mという数字を出されたとしても,せいぜい\sqrt{M}より大きい整数ならそれより大きくなりますね.

これは
\forall M > 0,\exists N\in \mathbb{N}\ s.t.\ n\geq N \Rightarrow a_n > M
と表現ができて,『どんなMを用意されたとしても,とある自然数N以上のnについてa_nMより小さくなるNを用意できる』
と言えちゃうわけです.


ε-δ論法

極限で外せない話というと,ε-δ論法ですね.
例えば\lim_{x \to a}f(x) = bという極限について
xaに限りなく近づくとf(x)bに近づく』
なんて説明がされますが,先程と同じように「限り無く近づくってなんだよ!」ってなるわけですね!
そこで

|b-f(x)|a周辺で限りなく小さくなる

と考えます.
すると「限りなく小さくなるってなんだよ!a周辺ってなんだよ!」ってなるわけですね.
そこで

どんな小さい数字\varepsilon > 0を出されたとしても|f(x) - b|<\varepsilonとなる範囲はaの周辺にある

と言い換えます.
そこで「限りなく小さくなるってなんだよ!」の問題は消えました.

次に「a周辺ってなんだよ!」についての問題ですが,同じように,

範囲の広さ\delta > 0があって|x-a|<\deltaの範囲ならそれを満たす

と言い換えることができそうですね.

これまでの話をまとめると

どんな小さい数字\varepsilon > 0を出されたとしても,対応する範囲の広さ\delta > 0があって,|x-a|<\deltaの範囲だったら|f(x) - b|<\varepsilonになりますよ

という感じになります.
論理記号を用いて表現すると

\forall \varepsilon >0 , \exists \delta >0 \  s.t. |x-a|<\delta \Rightarrow |f(x) -b|<\varepsilon

になります.

極限の公式

ちなみに高校でも扱う極限の公式
\lim_{x\to x_0}f(x) = \alpha
\lim_{x\to x_0}g(x) = \beta
のとき
\lim_{x\to x_0}(f(x) + g(x)) = \alpha + \beta
というような公式の証明は,ε-δ論法を使って証明することができます.

\lim_{x\to x_0}f(x) = \alpha

|f(x) - \alpha| < \varepsilon_1の誤差に収まる範囲\delta_1が存在し,
\lim_{x\to x_0}g(x) = \beta

|g(x) - \beta| < \varepsilon_2の誤差に収まる範囲\delta_2が存在する.

|f - \alpha||g-\beta|を用いてf(x) + g(x)について考えると三角不等式から
\varepsilon_1 + \varepsilon_2 > |f-\alpha| + |g-\beta| \geq |f+g - \alpha - \beta|
になるので,\delta_1\delta_2のうち小さい方を\deltaとし,\varepsilon = \varepsilon_1 + \varepsilon_2とすると
\forall \varepsilon , \exists \delta \ s.t. \ |x-x_0| < \delta \Rightarrow |f(x) + g(x) - \alpha - \beta| < \varepsilon
が示せる.